世の中には魅力的な楽器がたくさんあります。けれど、歌声ほど人の心を癒す楽器ってないんじゃないかな。バッハのカンタータ、ドイツ歌曲、美しいオペラのアリア達。留学中は毎週のようにオペラに通った時期がありました。学生時代にヨーロッパで過ごすと恵まれることが本当にたくさんあるんだな。でも、実際にオペラ全編を集中して観るのは大変な事で、外国語で繰り広げられるストーリーを理解出来ずに終わってしまうことも多かったですね。そんな中偶然気に入った歌手がいれば、長い時間をけっこう楽しめたりする。歌って他のどの楽器よりも好みが分かれると思うんですね。日本で仕事を始めてからは、オペラを観る機会は滅多になくなったのだけれど、なんとも嬉しいCDに出会いました。
マリア・カラス。クラシックファンでなくても知っている人が多いと思います。僕はカラスの歌をこれまで聴き入ることがなかったのですが、それは録音の古さのせいだと思いました。このデジタルリマスターのPUREでは、全身を投げ出し全てをさらけ出して歌うマリア・カラスを音割れのストレスなく聴く事ができます。18曲のアリアの他に初回限定版ではDVDもついているのだから、何とも贅沢なCDなのです。カラス最高の当たり役とも言われるプッチーニ作曲のオペラ《トスカ》より「歌に生き、恋に生き」を聴いた時は、思わず絶句して目頭が熱くなってしまいました。魂の叫びのような歌。この世に生まれたなら聴いておきたい。そんな一曲だと思います。
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