モーツァルトのパッセージ練習をしていると、思いのほか難しく上手く行きません。20歳の時なら気にもしない普通の分散和音でも、粒を揃えて和声に気を配っていると、もたついてしまうことしばしば。軽いスランプ状態か。いや、気持ちはいつまでも若くても、肉体は刻一刻と年齢を重ねているはずです。骨が折れる練習を終えた帰宅途中にふと、しなやかな筋肉に思いを巡らせていました。たとえばイチローは、他のプロ選手に比べ、ずっと俊敏で伸びやかな肉体を持っているように見えます。そのプレーは正確で美しい。そして故障もしない。イチローは、その身体作りには独自のこだわりがあると言っていました。普通の筋トレやマシンでは鍛える事ができない部位の筋肉を、特注マシンで程よく鍛えているそうです。ピアニストだって、年齢を重ねるほどしなやかな筋肉が必要になってくるに違いないのです。
そんな事を考えて夕食を終えてテレビをつけると、SASUKEスペシャルをやっていました。この番組、まだ続いていたんだ。僕はマッチョを見るのも好きではないし、もちろんSASUKEは好みの番組ではありません。でも今日はしなやかな筋肉の事を考えていたので、なんとなく見続けていました。すると、次ぎから次ぎへ登場する筋肉隆々の男達が、鉄骨のアスレチックに挑みかかっては無念にも崩れ去っています。それでも、いい所まで進んだ挑戦者は、割とリズミカルで流れるような動きをしています。傍から見ていると、みんなもっとしなやかな筋肉をつくればいいのにと思ってしまいました。
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