ギトリス来熊

イヴリー・ギトリスを知った時は衝撃的でした。ヴァイオリンをこれほど自由自在に操り、極限まで鳴らす人がいるだろうか。ギトリスの弓の軌道を辿ってみると、まるで武術の達人の刀が、縦横無尽に空を切っているような感じさえするのです。ギトリスの音色は、ヴァイオリンの音色を超えて、ダイレクトに心に迫って来ます。理屈抜きに一瞬で聴く人を魅了してしまう。よくピアニストやヴァイオリニストを音の魔術師と言ったりしますが、ギトリスは見た目も中身もまさに魔術師。ヴァイオリン1つで悲しみを慰め、踊りだしたくなるようなリズムで誘い、潤沢な香りで酔わせてくれる。お得意の小品が詰まった「24のカプリース」は絶品だし、彼の著書「魂と弦」は、音楽を志す人には是非読んで欲しい名著です。イスラエル出身でありながら、生粋のパリジャン。

 

一度生で聴いてみたいと思いつつ叶わずにいました。リヨン近郊の講習会に参加したとき、ギトリスに会いたいと話したら「そんなの簡単だよ。毎朝パリのカフェ・ド・フルールに座ってるからさ。」と、地元の学生が教えてくれた。行きましたよ、パリへ。一杯のコーヒーで2時間はねばったでしょう。しかし、思いは届かずギトリスは現れませんでした。その、ギトリスが6/19、熊本にやって来るそうです。なんで熊本やねーん!そこは福岡やろもん。