今日はドイツ人指揮者のLさんとその声楽家の奥さんと、テノール歌手のZさんも一緒に、幸福な音楽の時間を過ごす事ができました。壁一面に並んでいる使い込んだ楽譜とレコード。静かに佇む一台の古いスタインウェイ。壁には小さな色あせたモーツァルトの肖像画が掛かっていて、こちらを見つめています。80年の人生と、脈々と受け継がれるクラシックの歴史を感じるレッスン室です。僕は音楽家のレッスン室が好きです。本物のレッスン室は、独特の匂いがします。奏でられた音が、本棚の楽譜と楽譜の隙間に入り込んで、壁にも絨毯にも染み付いています。神聖な空間です。3月にコンサートで弾く、シューマンの「詩人の恋」をレッスンしてもらったのですが、今回つくづく感じたのが言葉の大切さ。当たり前の事ですけど、もっともっと正確にやらないと。僕のドイツ留学で得た一番の収穫は、ドイツ語の発音と語感がイメージできるようになったこと。でも歌曲の伴奏をやって、今回レッスンを受けて、強烈に言葉の大切さと美しさを再確認しました。音楽が言葉になって聴こえだすと、やみつきになります。Ich liebe dich.(I love you.) のフレーズを何回も何回も、本当にバカらしくて笑えるくらい繰り返して教えてくれる老夫妻の姿を見て、言葉って、音楽って素晴らしいなと思いました。
コメントをお書きください