アムステルダム留学中、演奏会にでかけた時の事。その日の演目はセミョン・ビシュコフ指揮、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団のショスタコービッチ作曲、シンフォニー15番(だったと思う)。友人が熱烈なファンだということで、一緒に出かけたのですが、生憎当日券が目の前に並んでいた人で売り切れてしまいました。そんな事もあるもんだ、くらいに思っていたら、遠方から来た友人は前売りを買っておけばよかったと、しきりに後悔している様子。それから聴く機会を逸して気に留めなかったのですが、先日テレビでN響を振っているのを見て、思わず見入ってしまいました。
曲は近代音楽の金字塔、「春の祭典」。ちゃんと振るだけで大変なのでしょうが、生き物のようなストラヴィンスキーのリズムを、深く多様に体中に漲らせて、指揮棒の動きに特化しています。複雑な筈の音楽が、とてもにシンプルかつ快活にどんどん立ち現れてきます。表情、見た目の面白さも申し分なく、行き過ぎるとお笑い芸人の◯ナナマンの片方に似ているようですが、そこには確かな知性が同居しているようです。オーケストラもよく鍛えられた機敏な兵隊のように、寸分のズレも感じさせずにフォローします。職人的な長所がよく発揮されているようです。ビシュコフのユーモラスで大胆な指揮ぶりには最後まで惹き付けられ、結局1時間のN響アワーを見終わっていました。こんな面白い指揮者だったと知っていれば、あの時もっと悔しがっていたのに。本当に生で聴きたかったです。
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